非時の味わい その1
大辞泉によると、
ひ‐じ【非時】 仏語。
１ 僧が食事をしてはならないと定められた時。正午から翌朝の日の出前までの間。僧侶は正式には一日一食で、午後の食事は禁止されていた。
２ 僧の午後の食事。規定にかなう正午以前にとる食事の斎(とき)に対していう。非食(ひじき)。非時食(ひじじき)。
３ 会葬者に出す食事。(しの)ぎ。
フランス語ではありませんよ（笑。れっきとした仏教用語であって、このへんの方言でなかったと辞書引いて知った高校生のとき、結構驚きました。
さて親戚に不幸があり、約3年ぶりに非時をいただきました。実家のあたりでは、葬式がでると組内で男衆は葬儀の準備から火葬手続きまで、女衆は食事の用意をする決まりごとがあります。この習わしも、親世代の引退と同時に消え行くものであるよな、とおもうことしきり。なんせ昨今の新築住宅は、自宅で葬式ができるようになっていませんからね。葬儀会館がぼこぼこ建設されているのを見るにつけ、結婚式の次は葬式が自宅からアウトソーシングされつつあることを実感します。
非時は葬儀当日にいただきます。今回の場合は12時開始ということで、母から11時ごろに公民館に行くように言われます。ここで一回目の非時をいただきます。
左上から時計回りに、「切り昆布と油あげ」「醤油豆」「胡椒汁」「白飯」です。この胡椒汁ですが、「胡椒を大量にいれた醤油風味のお湯」です。これを不用意に飲むとのどが焼けます。涙を流すためのツールだそうで。ちなみに蓋に「コショウ」と書かれた薬缶がどんと置いてあって、そこからお碗に注いでもらいます。食後のお茶は白飯のお碗でいただきます。洗い物を少なくする知恵なんでしょうか。
食事が終わると葬儀会場の故人宅まで戻ります。
（つづく）
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コメント
所かわれば・・・ですね。まずはご愁傷様でした。
しきたりが厳かに執り行われているんですね。
うちも去年、主人の母が亡くなったとき新潟でお葬式があったけれど本来なら自宅からの筈が「豪雪」のために急遽会館で執り行われました。
あっちでは「お解き（おとき）」とか言ってたかな？
仕出し料理を頂くだけだったけど、本来自宅からだと、身内は一切台所に立たず隣近所が全てをやってくれるらしいです。でも、母が住んでいたところは過疎化のすすむ「集落」だから手伝える人も少なくなっているのも事実です。
「効率化」を口にしながらも勝手な言い分だけれど伝統やしきたりを継ぐ人がいなくなるのも寂しいですね。
投稿: さよ | 2006/03/14 00:24
>>さよさま
お気遣いありがとうございます。今回はいわゆる「孫の祭」な葬儀だったので、にぎやかなものでした。そういうわけでこういう記事も記録として残しておこうと思ったわけでございます。
住んでない土地でのお葬式だとさぞ大変だったことでしょうね。さよさんの意外（？）なお人柄が垣間見える最近の記事、楽しませてもらっておりますよん。
投稿: earth | 2006/03/14 01:40
うっわー！非時の記事がアップされてるではありませんかっ！うれし～♪
細かい解説入りでよく分かります。いろんなことに理由がちゃんとあるんですね。
非時は仏教用語ですか。うち、神道なのに非時って言うんだけど…まぁ、使い方も転訛するんでしょうね。
昼メニュー、汁が違いますね。おっしゃっていたとおり胡椒汁♪飲んだこと無いからちょっと興味アリです。
投稿: i-boshi | 2006/03/15 06:59
>>i-boshiさん
参考になりましたでしょうか。i-boshiさんの記事に触発されて細かく書いてみました。写真とってたら妹は微妙な顔してましたが、こういう習慣ももうなくなりつつあるから記録に残しときたいの、と説明してたら納得してました。彼女はi-boshiさんとおなじく伝統を守る側の人なのですよ。
湯+醤油+胡椒、で出来上がりらしいですよ。お年寄りからはもっと胡椒増量を求められた、と給仕してた妹の同級生が言ってました。「これでは涙でやへんぞ」って。なんかすごいわ。
投稿: earth | 2006/03/15 11:19